梅雨に入りむし暑い日が続いています。
皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか?
さて、今日は梅雨の日の生地について話していこうと思います。
梅雨の日は轆轤で成形し削りに入る前の生地が、
口縁はすぐにかわくのですが、下部特に底部が乾きません。
この為、ヒビが生地の収縮率の関係でできやすく、困ります。
そこで、高台裏に焼き物の削り粉をしいて口部との乾きを
同じにすることにより、ひび割れを防止します。
私もヒビが生地に入るのには悩んでいましたが、こうして解決しました。
有田の伝統の知恵の紹介でした。
先日、ある経営者さんと飲む機会がありました。
その方もモノ創りの会社の職人気質の社長さんだったので、
「物創りに一番大切なものはなんですか?」と質問してみました。
そうしたら、その社長さんは「人だよ。」とおっしゃいました。
「作品にはそれをつくった人間の精神の奥深さが自然と現れる。
技術も勿論大切だが、それだけでは人を感動、感心させられない。
物を良い風合いにするには成熟した人間性が大切だね。」と続けられたので
「なんだか、抽象的な話ですね。具体的にはどうすればそういう味をだせるんですか?」
と言いましたら、
「それは一言では説明できないなあ。一つヒントを言えば、
物の本質を知ることなんじゃないか?」とおっしゃいました。
なんだか、心打たれるお話でした。
私たち、真右ェ門窯は様々な方法で焼き物を成形していますが、
本日はその中で三種類の方法を話したいと思います。
一、轆轤(ろくろ)整形。
これは回転する轆轤の上で、磁土を引き上げるやり方です。
磁器は陶器に比べ硬いので成形はしにくく、難度の高い技術が必要です。
全国の焼き物の九割は轆轤成形だといわれています。
二、手びねり成形。
轆轤で大まかな形を作った後、土を指先で形を整えて、整形しています。
効率は悪いですが独自の風合いが出ます。
三、板作り(タタラ成形)
板状にした陶土を曲げたり張り合わせたりして成形する方法。
角状のものや板皿などに適しています。
タタラとは粘土の塊を糸で切り、板状にしたものです。
その他にも様々な方法がありますが、今回はここまで。
表現するものに応じて、型にとらわれず、
様々に道具、成形方法を変えるのが日展作家の世界です。
白洲さんの選んだ骨董品を以前テレビで放映していましたが、彼女の所有していたという
焼き物の好みはとても素直で品のいいものでした。
この人はかなりの目利きだと思いました。
洋服もかなりお洒落な人だったそうで、服も焼き物も理屈ではなく直感で選んでいたそうです。
器の好みはやわらかくて強い形が好きだったそうです。
薩摩出身で率直な人でごまかしが嫌いな人だったそうです。
昔の収集家は焼き物の名品を所有することを、「預かる」という言葉で表現していたというをある人から聞きました。
家宝にして、代々後世に伝えるという意味だそうです。
自分だけではなく、代々伝えるという言葉。
これを言われたら、陶芸家としては冥利に尽きますね。
こういうひとには本当に感謝いたします。
何百年も残るものをつくりたいですね。