茶道具はデパートの直接光では本当の良さは分かりません。
茶室の間接微光で本来の味わいがわかります。
素地に銅のうわぐすりを掛けて窯に入れ、千三百度の高温で焼くと辰砂という美しい赤の作品になりますが、
一回の窯でだいたい半分くらいがボツになります。下手したら全滅することも・・・
うわぐすりが流れたり、傷がでたり、変色したりしてね。
辰砂をやったことのない方からすると「そんな馬鹿な話があるか!」と仰るでしょうがこれは辰砂窯では当たり前。
みんな窯のスタッフはそのことがわかっていますからびっくりしないわけです。
うわぐすりの掛かった面積が多ければおおいほどそのリスクは高まります。
ですから花瓶なんかは採算を全く度外視しないと辰砂はやれないわけです。
ですからなるだけリスクを減らそうと湯呑やぐい飲みなどの小物で窯の経営を安定させておいて、余った時間で花瓶などの大作をやるわけです。
まあぼちぼちやっていければいいと二代真右エ門は思っているわけです。
歴史に残る作品が作れればそれで本懐だと。
陶芸家の後輩とデザインについて話す機会がありました。
後輩は「売るためには過去の売れている自他社商品のデーターを少しでも多く調べて改良するんです。
そして販売したらリスクが少ないですよ。科学的に売れる商品は分析できます」といいました。
私は思わず「ムカッ」としました。
「お前なあ。俺たちは何を売っているのかわかってるのか?」
驚いた後輩は「え、いや?さあ?モノじゃないんですか?」
「もちろんモノさ。しかし、そのモノに感動をこめて売ってるんだよ」
「え、いやしかし、データーを分析するのは経営には大切では?」
「それはモノが出来上がったあとの話だ。デザインする段階から
そんなこと考えてどうする。モノが委縮しちゃうだろ。そんなんじゃ人を感動させられないぞ」
後輩は不服そうでしたが、「はい・・・」とか言ってました。
モノつくりに関しては意外と熱いんです。私。
有田焼は四百年の伝統を守って進化していますが、私は日本一の白磁の美しさを誇る天草の土、
大自然からもたらされる水、そして生産者たちの熱き思いがあってこそ成しえる作品はまさに陶器の
芸術品といっても過言ではないと思います。
真右エ門窯では土の品質管理を徹底しており、二代真右エ門窯当主の馬場九洲夫がわざわざ土屋
さんまで通い、土ができてくるまでの工程を見届けています。
そして信頼のおける土屋さんが生成した土しか仕入れません。
これが釉(うわぐすり)の美しい発色のコツなのです。
十月十三日(水)から十九日(火)まで 午前十時から午後八時まで
日本橋高島屋 七階 ギャラリー暮らしの工芸で二代真右エ門(馬場九洲夫)の個展があります。
ぜひご覧ください。
テーマは<美の世界>です。
「真右門さんの白はいいなあ」と皆さまから喜んでいただけるような作品のみを窯あがりの焼き物のなかから厳選しています。
えっ?真右エ門さんといったら赤なんじゃないの?とか、油滴の黒なんじゃないの?とかいう声が聞こえてきそうですね。
しかし私どもが言いたいのは美しい色をだすためには土(白磁の色)を厳選させなくてはならないということなんです。
有田焼は土が特上、選上、選中、選下、などさまざまな等級がありましてそれぞれ鉄分が少ない順から値段がお高くなっています。
一般的には特上が一番良いみたいに言われていますが、しかし実際はどうなのでしょうか?
じつは、これがそうでもないんです。
窯でどのくらいの温度で焼くか、またどんな釉薬を掛けるかでも良いものができるかどうかは違ってくるんで、一慨に特上が良いわけではありません。
ですからこれは作家の長年の経験と目利きがすべてです。
当店では有田焼の土の基準によって作品の判断を行ってはおりません。
実際、青磁は選下(鉄分が多い土)のほうが美しい色になります。
私どもは自分たちが対価に見合ったもの、それ以上の価値があるかどうかを判断しそれをみたさなければ商品としてお出しすることはありません。
<本物>だけを見つめて納得のいく商品のみを販売させていただきます。
「この釉薬(色)にはこの土だ」と決めて焼かれたものは時代が経てばたつほど良い味わいになってきます。
そのあたりのことも考えてみなさまに私どもの作品をお届けできればうれしく思います。
Powered by WordPress