先日、あるお寿司屋さんに行きました。
カウンターに座り、食事をしていますと、一人の白髪の初老の男性が話しかけてきました。
しばらくお話をしていますと、「いやー、今日の茶席の井戸茶碗は最高だったな。」と言われてたので、
どうもお茶をされていることがわかりました。
私はお茶の世界にはとても興味がありますので、
「お茶の世界の無とはなんですか?」と尋ねてみました。
茶人の方は少々酔われていましたが、
「はっはっは!君の歳で無を語るのは五十年早いよ。無を語るには早すぎる。」とおっしゃいました。
「なんですか?」と反論したら、
「無を語るには色々な経験を積まなくてはいけない。人生は祭りだ。
祭りをこれから経験しなくてはいけない若者には無は早い!
私くらいの年齢になってわかる世界もあるよ。」といわれました。
「そうですか・・・」といいましたら、
「まあそうは言うけど知識としては知っておいていいね。
無とは水の味と表現するといいかな。」とおっしゃいました。
漠然としかこの意味はわかりませんでしたが、そのうちわかる日が来ればいいなと思いました。
梅雨に入りむし暑い日が続いています。
皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか?
さて、今日は梅雨の日の生地について話していこうと思います。
梅雨の日は轆轤で成形し削りに入る前の生地が、
口縁はすぐにかわくのですが、下部特に底部が乾きません。
この為、ヒビが生地の収縮率の関係でできやすく、困ります。
そこで、高台裏に焼き物の削り粉をしいて口部との乾きを
同じにすることにより、ひび割れを防止します。
私もヒビが生地に入るのには悩んでいましたが、こうして解決しました。
有田の伝統の知恵の紹介でした。
先日、ある経営者さんと飲む機会がありました。
その方もモノ創りの会社の職人気質の社長さんだったので、
「物創りに一番大切なものはなんですか?」と質問してみました。
そうしたら、その社長さんは「人だよ。」とおっしゃいました。
「作品にはそれをつくった人間の精神の奥深さが自然と現れる。
技術も勿論大切だが、それだけでは人を感動、感心させられない。
物を良い風合いにするには成熟した人間性が大切だね。」と続けられたので
「なんだか、抽象的な話ですね。具体的にはどうすればそういう味をだせるんですか?」
と言いましたら、
「それは一言では説明できないなあ。一つヒントを言えば、
物の本質を知ることなんじゃないか?」とおっしゃいました。
なんだか、心打たれるお話でした。